マーケティング5.0から読み解く次世代のEコマース

CRM, Eコマース, データ活用, マーケティング

世界的なパンデミックが起き、買い物に対する意識は大きく変わりました。

日本国内でコロナ以前は年に0.5%増程度で推移していたEC化率が、コロナを挟んだ2019年〜2020年では1.32%に伸びています。この数字だとわかりにくいですが、金額にすると2兆円を超えます。となるとどれだけECサイトで購入をする人が増えたのかという実感がわくのではないでしょうか。

しかもその伸び率は、ほぼBtoCへの物販の伸びに当たるといわれています。

 

1.ECの大混雑時代

世の中のEC化率を受け、小売業では何が何でもECサイトを作って物販をしなければ時代に取り残されるぞ!
と、言わんとばかりに多くの企業が参入して来ました。
加えて、個人でも簡単にECを始められるプラットフォームの台頭により、その競争は老舗新店問わずの大混雑時代になっているのです。

しかし、開店したものの成功するのはわずか10%程度と、激しい競争になっています。

 

2.ECはもはや新しい武器ではない

これまでは、販売商品の品質はもちろんのこと、「買いやすい、信頼できる、すぐ届く」などインフラの充実度で売上が左右されており、それが差別化のひとつになっていました。

しかし、多くのプラットフォームが標準装備としてそれを取りそろえ、個人でも必要な機能を容易に調達できるようになった今、それは差別化できる要因ではなくなってしまったのです。
これらを全て取り揃えても、満足のいく結果を得られることは少ないといっても過言ではありません。

もはやECサイトはリテラシーが高い人だけが持てる最新の武器ではなく、一家に1台くらいの普及品になってしまいました。そして「差別化」というものが何を指すのかが変わりつつあるのです。

では、私たちはどんなECサイトを作っていくべきなのでしょうか。

 

3.マーケティング5.0を理解することで次世代のEコマースを見てみる

2021年2月、マーケティングの権威、フィリップ・コトラー氏が「マーケティング5.0」という新たな考え方を提唱しました。

インターネットやSNSが世の中に浸透し、デジタルを中心に回っている現代にフィットするようなマーケティングの様々なアイデアが紹介されています。

これまでのマーケティング戦略は、商品の販売に重きを置いたマーケティング1.0から、オフラインとオンラインを互いに行き来するようなマーケティング4.0まで時代と共に最適解が移り変わってきました。

そして更なるテクノロジーの進化により、AIやIOTが台頭し人間を模すようなことが出来るようになり、新しいマーケティング5.0では、その技術を生かし、カスタマージャーニー全体を通じてお客様の体験価値を高めていこうということが提唱されました。

具体的に言うと、膨大なデータの処理やスピードが求められる業務はAIやロボティクスに任せ、お客様とのコミュニケーションや、突発的な対応は人間が行うようにすると、マーケティングの効率性を高めながらお客様の満足度も向上できるのでは、ということです。

お客様と対峙する事が多い小売業では、特にお客様とのコミュニケーションを意識しなければなりません。
お客様の複雑な心の機微を意識し、理解する力と、個々の要求に合わせてカスタマイズされたサービスを提供する柔軟性が求められているのです。

 

4.ECサイトのさらなる進化、体験価値の「その先へ」

ここで考えなければならないのは、商品を数多くを取り揃えることでもなく、配送や決済のサービスを充実させることでもないということは前述より理解していただけたかと思います。

例えばあなたのECサイトがダイエット食品や器具を取り扱う店舗だったとします。
様々な種類のサプリを揃え、器具の使い方、効果も分かりやすく記載し、いくつか販売することが出来ました。

しかし、あなたは購入した顧客のことをどれだけ知っているのでしょうか?
「いつまでに何キロ痩せたい」
「ダイエットではなくて筋肉をつけたい」
そして、
「ダイエットをしなければならない本当の理由」
これらを知ることが出来なければ、継続してお客様になっていただくことはできないのです。

お客様は何かの理由があって「理想の姿」にトランスフォーメーションしようとしています。
しかし、商品をただ販売するだけでは、そのトランスフォーメーションは全て顧客に任せきりにしているということになるのです。
ひとりで自身を管理し、ダイエットを達成することはどんなにすばらしいサプリや器具があっても達成することは容易ではありません。

その結果、お客様はダイエットを諦め、続けていれば継続して購入するはずだった商品も購入しなくなってしまうのです。
つまり、お客様の来店の「本当の目的」をキャッチし、そしてその姿になるためにはどんな「障壁=ソリューション」が隠れているかを知ることが重要になってくるのです。そして、そのためには、データ活用が有効になってきます。

データを活用して成果の特定、ソリューションを仮説、そして一緒に伴走して乗り越えるサービス提案が、ECサイトのさらなる進化、体験価値の「その先へ」向かうこととなります。

 

テクノロジーの進化にコロナ禍が重なり、お客様が求める顧客体験は大きく変化しました。
大量のデータを活用してカスタマージャーニーを最適化させるには、ユーザー理解と個々にカスタマイズされたサービスで、お客様の「本当の目的」まで共に走り、成果にコミットさせることが、次世代のECサイトに求められていることです。

この記事を書いた人

松木 さやか ECソリューショ部 マーケティングプランナー
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フィリップ・コトラーは名言がいっぱい。
””マーケティングは一日あれば学べる。しかし、使いこなすには一生かかる。”

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